d4PDFに基づく確率雨量の変化と都市浸水への適応

摘要

近年、豪雨による内水氾濫が多発している。平成30年7月豪雨では、内水氾濫による浸水被害が西日本を中心に19道府県88市町村で発生し、1.5万戸が浸水した。令和元年8月には、九州北部地方を中心に総降雨量が600 mmを超過する記録的大雨により、佐賀県、福岡県、長崎県で4,000戸の内水被害が確認された。また、令和元年台風19号では東日本を中心に15都県140市区町村で浸水被害が発生し、3万戸が浸水した。このように近年、甚大な被害が続いている。今後は、人口減少、財政の悪化などの社会的な変化と、降雨の頻度と規模の増大などの気象現象の変化に適応していくことが求められる。そのため、気候変動による将来の外力を科学的に分析し、その分析に基づいた適応計画、戦略を流域全体で、各主体の協働のもと立案することが求められる。本稿では、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(database for Policy Decision making for Future climate change：以下、d4PDF)を用いた将来の確率雨量の変化倍率の推定と適応について検討した研究事例1)、2)の紹介と、これからの気候変動による都市浸水への適応に向けて述べる。