後眼部疾患治療を目指した点眼ナノ粒子DDS製剤の開発

摘要

加齢黄斑変性や糖尿病性網膜症など,加齢や生活習慣が引き起こす難治性後眼部疾患は視覚障害を伴うことから, 超高齢社会である我が国において平均寿命と健康寿命の差を拡大する重大な社会問題である.これらの疾患は, 症状の進行が比較的遅く自覚症状に乏しいこと, 現状では治癒が難しく薬物治療が長期間に及ぶためコンプライアンスが低下しやすいことから,人口当たりの罹患者数が増加の一途を辿っている.視力障害を持つ患者の80以上は50歳以上という報告もあることから,難治性後眼部疾患の罹患者（すなわち視覚障害）は今後も増加し続けると予想され,治癒可能な治療法の確立は喫緊の課題といえる. 難治性後眼部疾患に対する既存の治療法としては,外科的治療や硝子体内注射などによる薬物治療が挙げられる.近年では, 後眼部疾患の病理研究が進んだことで,症状を抑制する有力な薬物も開発されている.一方で,これらの治療法は一般的に自己治療が困難であるため,患者に通院による負担を伴うほか眼内炎により失明をきたすリスクがあり,医療従事者には一定の技術習熟が必要となる.