砕石空隙貯留充塡物としてのタリンカアッシュからの重金属溶出特性とそのモデル化

摘要

石炭灰クリンカアツシュが地下碎石空隙貯留の充塡物として量的に安定して供給され得ることを明らかにした既報を受け，治水のみならず利水(おもに非常時の生活用水)面の効果も目指していることから，砕石空隙貯留水の重金属汚染リスクを実験的に調査した。ガラスロートカラムを浸透する水が含む重金属濃度から，鉛は吸着が溶出を上回るものの，その他の重金属では溶出が上回ることが明らかとなった。地下砕石空隙貯留状を，300mlビーカーを用いて再現し，さまざまな条件を変え，2～3週間おきに溶出水を入替え，1回目溶出期間，2回目溶出期間，3回目溶出期間など，個々の期間における重金属溶出を調査することとした。その結果，水道水質基準にある7つの重金属すべてにおいて，1回目溶出期間後の水においてすでに基準を満たし，2回目，3回目と水の入れ替えを繰り返すとともに濃度が低下しさらに基準を満たしゃすくなること，粒径が小さいクリンカアッシュほど比表面積が大きいため溶出が大きいことが明らかとなった。溶出後の固液分離とその後のクリン力アッシュの乾燥に伴う重量変化から，「付着水」量を求めた。付着水はクリンカアッシュの外縁部Edgeに形成され，比表面積の大きさと関係が深く，重金属溶出濃度の決定に大きな役割を果たすことが推察され，それを考慮した簡単なEdgeからの溶出モデルを形成した。簡易なモデルにも関わらず，その適用結果はビーカー溶出試験の結果をよく表わし，クリンカアッシュからの地下砕石空隙貯留時の重金属溶出を表わすモデルとして期待される。