近代窯業の父としてのワグネルにっいて-ワグネルによる旭焼の創出を中心に-

摘要

ドイツ人ゴットフリート·ワグネル（Gottfried Wagener,1831-1892)は，日本の窯業に「近代化」が求められる明治期に来日し，官民を問わず様々な立場から欧米が先行する熏業技術の導入，指導を押し進め，また黨業教育の基礎を築き人材育成に貢献，さらに研究論文執筆，様々な意見陳述を行い，ついには自ら「旭焼」と名付けた新陶器の研究にあたつた.その活動は後に近代窯業の父と高く評された.ワグネルの日本の黧業近代化の「指導」が，今もなお重要な意義を持ち続けているのは，とくに陶磁制作において顕著であるが，明確な目的に沿った科学的知見，技術改良の在り方を示したことである.ワグネルは明治期の海外輸出，同時に日本美術の海外発信として期待された陶磁制作において，日本の伝統美術を応用した新機軸を確立するため，最適な技術，技法を用いることを訴え続けたのである.