しきい値問題を考える: 合理的な規制の視点から

摘要

二〇一一年三月、福島第一原子力発電所の事故の直後から放射性物質に汚染された野菜や牛乳が見つかり、当時の政府は三月一七日に暫定規制値を決めて食品の流通を規制し始めた。当初は放射性ヨウ素も問題だったが、半減期八日のヨウ素131は急速に減って、その後は放射性セシウムだけが問題になった。放射性セシウムの暫定規制値は一般の食品では五〇〇ベクレル（Bq）／キロムグラであった。これは、一年間の食品の摂取からの実効線量を五ミリシーベルト（mSv）以下に抑えることを根拠としていた。