眼形成外科手術が原因の複視 および眼窩底骨折が原因の 複視への治療方針

摘要

"Baggy eyelid"と呼ばれる目の下のたるみは眼球の下の眼窩脂肪がはみ出すこと で生じる.その治療には，たるみの原因となる脂肪をまぶたの裏側から切除する経結膜的眼窩 脂肪切除術や，眼窩脂肪を移動させることで眼の下のたるみとくまの原因になる凹みを同時に 解消し，さらに余った皮膚や筋肉を調節できる経皮的眼窩脂肪移動術（ハムラ法）等がある.手 術の際に眼窩脂肪内にある下斜筋や下直筋,その支配神経，pulleyを損傷することで斜視や眼 球運動障害を生じる.眼窩底骨折も下眼瞼手術と同様に眼球の下の眼窩内組織が骨折部位で損 傷,牽引されることで斜視や眼球運動障害を引き起こすが，損傷部位が下眼瞼手術と比較して より深い位置であるため眼球運動障害や斜視の性状は異なる.いずれも眼球運動障害を生じて いる原因が麻痺か,拘縮か,瘢痕癒着なのかによって眼窩手術,斜視手術を選択する必要があ る.