コロナ後の地域循環共生圏

摘要

中央環境審議会基本政策部会の臨時委員の一人として地域循環共生圏の考えを示した第5次環境基本計画の策定に関与した。計画策定は新型コロナウィルスのパンデミック発生の前だったが,コロナ禍を経験した今,言えることは地域循環共生圏の考え方は間違っていなかつたということだ。コロナ禍からの復興への取り組みが進む中で,最もあってはいけないことは,元の世界に戻ることだ。「元の世界」とは温室効果ガスを排出しながら見かけ上の成長をし,人類の存続基板である生物多様性をだめにする,つまりは自分たちの存在基盤を掘り崩しながら,無限の成長を目指してきた世界だからだ。コロナ後の重要なキーワードは「分散」であり「生態系の中の人間」である。コロナ禍を経験した今だからこそ「一局集中から分散へ」という流れの中で,資源やエネルギーの循環を実現するという考え方はさらに重要になつたと言える。しかもそれを実現するために残された時間は少ない。