終末期、緩和医療の目と心

摘要

終末期にある患者は、病いの進行に伴い日常生活行 動の自立、役割、趣味、生きがいなどのさまざまな喪 失を体験しながら生きている。そして、セルフケアを はじめ他者の手助けを必要とすることが増加するなか、 自己を他人に迷惑をかける存在ととらえ、自尊感情の 低下や自己の存在意義を感じられずにスピリチュアル ペインを生じることが少なくない。そのような終末期にある患者の看護ケアは、患者の 尊厳が維持され、最期の瞬間までその人らしく生き抜 くことができるように支援することである。その人ら しくとは、個人の根幹となる性質で、独自性をもち、 個人本来の姿であり、人間としての尊厳が守られた状 態という特性と定義されており、個人の根幹となる性 質とは価値観?信念である。では、具体的にどのように支援すればよいのだろうか。筆者は、患者を全人的に理解し、誠実な態度で専門 職としてその人に合った高度な技術をもって症状緩和 を図りながら、看護の基本、つまり患者の価値観を把 握し、それを取り入れた基本的ニードの充足とテー ラーメイドのケアを誠実に行うこと、アドバンス?ケ ア?プランニング(Advance Care Planning : ACP)の実施 と考える。本稿では、看護師の態度、患者の全人的理 解、看護ケアについて実践知を交えて述べる。