漢方薬の服用方法

摘要

漢方の服用方法は，「食前または食間に服 用する」が原則とされている.これは漢方治 療の原典となっている『傷寒論』に数種類の 漢方薬で食前投与の指示があること，さらに 昭和時代の漢方の代表的教科書に「食前に温 服する」という記載があることから，現在の 服用方法が確立されたといわれている.薬理 学的には，食後に内服すると消化管内におけ る食物の吸収と競合し，漢方薬の速やかな吸 収が妨げられるという考えもあるが，実際に は吸収量の変化はなく，起こりにくいとされ ている.日本東洋医学会が発刊した『専門 医のための漢方医学テキスト』には，「漢方 薬の服用方法として,一般的には薬の吸収を 考えて食前または食間と指導されているが， 基本的にはいつでも飲んでよい」との記載が ある2. 筆者も食前?食間にこだわると内服が不十分になるおそれがあることから，服薬 アドヒアランスを考慮して，食後の内服を指 示することもある.また，処方箋上に食前?食間と指示しても「飲みづらい場合は，食後 の内服でもかまいません」と口頭で伝えるよ うにしている.