抗HER2薬治療中に増大した頸部リンパ節転移に対してTrastuzumab Deruxtecanが奏効した再発乳癌の1例

摘要

要旨:症例は65歳,女性。12年前に右乳癌で乳房温存術を施行した。原発巣はER陽性,PgR陰性,HER2遺伝子の増幅はなく,内分泌治療を継続していた。術後10年目に腹膜転移による十二指腸狭窄が判明し腹膜転移巣でHER2陽転化を 確認した。trastuzumab, pertuzumab併用化学療法により腹膜転移巣の縮小は維持されていたが，術後12年目に嘎声が出現し,右頸部リンパ節転移が明らかになった。trastuzumab, pertuzumab不応性の転移と考え，trastuzumab deruxtecan (T-DXd)の投与を開始した。T-DXdを4回投与後には頸部リンパ節は縮小し,嘎声の改善も得られた。T-DXdは薬物抗体比が高く強力であり，bystander効果によりHER2が低発現,あるいは不均一性が存在すると思われる転移巣においても有効であると考えられた。