照明器具設備

摘要

近年,日本各地で大規模な地震災害が頻発している。2016年の熊本地震では,震度7を観測する地震が連続して発生し,熊本城をはじめ多くの建築物が倒壊し甚大な被害をもたらした。2018年の大阪北部地震では,鉄道や道路などの交通網が寸断され,一時的に都市機能がマヒした。同年の北海道胆振東部地震では,火力発電所の停止により北海道全域が停電する「ブラックアウト」が発生した。また,2021年の東京23区で,東日本大震災以来となる震度5強以上の揺れを観測したのは記憶に新しい(写真-3.4.1参照)。地震の揺れには,カタカタとした小刻みな短周期の揺れからゆったりとした長周期の揺れまで含まれる。1秒以上の短い周期の地震動は10階建て以下のマンションやビル,木造家屋を大きく揺らし,建築構造にもよるが,超高層マンションの20階以上の高層階では,体感する揺れは気象庁が発表した震度のプラス1になるといわれている。地震動は水平方向の揺れが上下方向よりも大きく,建物の揺れを抑える対策は水平方向が念頭に置かれている。建築設備の耐震設計·施工の基本は,建築物の各所に支持された設備機器,配管等が加わる地震力に対して移動,転倒,落下しないように支持部の設計·施工を行うことである。建築物に設置される照明器具は,建築物内部および屋側の構造躯体,天井や間仕切り壁等の非構造部材または工作物等ありとあらゆる場所に設置されているため,耐震対策は多種多様となる。また,照明器具は盤やケーブルラック等に比べ,機器の重量が軽量であり非構造部材に多く取り付けられていることから,適切な耐震対策を取られていないのが現状である。本稿では,照明器具設備における耐震対策の考え方やその施工方法について紹介する。