心エコーでわかること(上級編)

摘要

左室心筋のストレイン解析は,駆出率が低下する前の心筋障害を早期に検出で き,生活習慣病や弁膜症,抗がん薬治療関連の心筋障害の早期発見,さらに肥大 心の鑑別診断や心臓再同期療法の適応決定など,幅広く臨床応用されている.左房のストレイン解析は，左房機能を客観的に定量化し，左房機能不全が関与す る疾患の予後予測を可能にする.3Dスペックルトラッキング法により三次元的な心臓の動きを評価できる.左室収縮能を評価する際に広く用いられる 駆出率は,心筋の機能低下を鋭敏には反映で きないことが知られている.たとえば,収縮 カの保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction : HFpEF)では,駆出 率が保持されているがゆえに収縮能が正常で あるかのように誤解されるが,組織レベルに おいては心筋が肥大したり間質に線維化が起 こったりしているため,心筋の収縮能は低下 している.心筋機能を計測する方法としてス ペックルトラッキング法による心筋ストレイ ン解析が開発され,現在ではすべてのハイエ ンドエコー装置に搭載され,臨床応用が広 がっている.本稿では,臨床での活用法につ いて解説する.