黒毛和種における飼料利用性の 遺伝育種学的研究とこれから

摘要

国内の牛肉生産において、飼料コスト削減 は重要な課題である。飼料用トウモロコシの価 格は昨今の米国における不作や中国での需 要増により高騰が続いている。飼料費は生産 コストの3割弱と高い割合を占めているが、価 格高騰が続けばさらに膨らむだろう。こういっ た外的要因に左右されず安定して牛肉生産 を続けるには、少ない飼料で大きく育てる、す なわち飼料利用性を高める必要がある。どう いう方法があるか検索してみると、「飼料調製」 「未利用資源」に関する研究例を多く目にす る。こうした技術は、牛肉生産を1サイクル回 せばある程度の結果が得られるため、短期的 な戦略といえる。一方で、長い時間を要するが 確実に大きな効果を期待できるのが育種改良 である。しかし、飼料利用性に関する遺伝育 種学的な研究は極めて少ない。その主な理由 は、一年半以上という長い肥育期間において、 個々の体重や飼料摂取量データを数多く集め ることが困難であるからかもしれない。本稿で は、飼料利用性の改良に関する背景と問題点 を述べ、これまでの研究内容と今後の課題に ついて記述する。