境界悪性葉状腫瘍内に発生した浸潤性小葉癌の1症例

摘要

44歳,女性?乳癌検診のマンモグラフィで右乳房内に微細石灰化が認められ,前医を精査目的で 受診した.乳房超音波検査では明らかな悪性所見を認めず,経過観察されていた.2カ月後,乳房 超音波検査で右乳房の12時方向に低エコー域,左乳房の2時方向に17mm大の境界明瞭な腫 瘤を認めた.右乳房の病変は針生検で偽血管腫様過形成,左乳房の病変は穿刺吸引細胞診で良 性の結果であった.さらに3カ月後，両病変とも増大傾向を認め,両側の針生検を施行したところ病 理検査では,右乳房の病変は浸潤性乳管癌，左乳房の病変は葉状腫瘍疑いの診断となった.当院 での手術を希望し,当科を受診した.右は乳房温存術,左は乳房部分切除術が施行された.摘出標本の病理検査では,右はHER2陽性の浸潤性乳管癌,左は境界悪性葉状腫瘍内に5mm大の浸潤性小葉癌が併存していた.術後は,右乳癌に対する追加治療（放射線療法,抗癌化学療法, 抗HER2療法,内分泌療法）が行われた.