クーロンアシスト原子核束縛状態1-14N系の発見

摘要

核力をストレンジネスに拡張した2体のバリオン間相互作用について、S=-1系である∧N相互作用に比べ、1Vあるいは∧∧などのS=-2系における2体の相互作用に関する実験データは未だ十分ではありません。カウンター実験とエマルション実験を組み合わせたJ-PARC E07実験は先行研究の10倍の統計を目指して実施され、現在までに33事象のS=-2ハイパー核が発見されています。その内の1つ、1-静止点から2つの∧ハイパー核が生成された事象はその反応過程が1-+14N→10^Be+5^Heと同定され、1-+14N系の束縛エネルギーは1.27±0.21MeVと見積もられ、伊吹事象と名付けられました。これは1-+14N系がクーロン力だけでなく引力的な三1N相互作用によって束縛した状態、1ハイパー核となったことを示す結果であり、不定性の小さい1N相互作用に関する初めての実験データです。本稿では、私が実験準備、実施、解析を自身で行い博士論文としてまとめた.J-PARC E07実験と伊吹事象について紹介したいと思います。