聴覚的感受性に基づく周波数に着目した医療機器オリジナルアラーム音の基礎検討

摘要

医療事故の報告件数は年々,増加の一途を辿つている.そのなかで,病院で用いられる電子医療機器に関するアクシデント·インシデントも発生件数も伸びている.電子医療機器は,生理学的モニタリング,生命維持管理装置,治療機器と多岐に渡って医療に関わっているため,事故防止措置は高いレベルで施されている.そのなかの一つに,異常事態を知らせるアラームが存在する.反面,アラーム音による医療事故(インシデントも含む)は,頻繁に発生しているのが現状である.原因としては,アラーム音の見過ごしがあり,緊急事態への対応を遅らせてしまう.アラーム見過ごしが発生する理由としてはアラーム発生時間が1日の43.7%にもなるような集中治療室でのアラーム疲労(アラームへの慣れによる不注意も含む)によるものだと考えられているアラーム疲労とは,過度のアラームが鳴る環境(一種の騒音下)を経験した結果として,医療従事者のアラームへの応答時間の延長や,アラームに対する応答率の低下が発生することを指す.アラーム疲労になるのは一般的であり,病院環境が深く関わっていると言われている.日頃より余りにも時間的に多すぎるアラームに医療スタッフの感覚が麻痺することが原因だとされている.注意するにも,アラーム疲労がおこるような状況では,アラーム対応が極めて難しいとされ,アラーム疲労を組織的に軽減する研究もなされている.しかし,組織的に病院環境の改善は,即座に行うには難しく,医療現場において,これらの問題への対策が急務で求められている.そこで,本研究で着目したのがアラーム音の改善である.アラーム音は,JISにより規定されている.