漢方治療が奏功した陽気虚を伴う味覚障害の2症例

摘要

味覚障害は現代医学的には、すべての味を感じ難いか、感じない味覚減退または無味症、何も口にしてないのに苦味、渋みなどを感じる自発性異常味覚、特定の味(主に甘味)だけ不明な解離性味覚障害、本来の味と違って感じる異味症、嫌な味がする悪味症に分類される。原因として、亜鉛欠乏、舌炎などによる味覚を感じる器官の異常、舌神経、舌咽神経、顔面神轻、その中枢の異常、薬物、シヱ—グレン症候群、心因性、または加齢による口腔乾燥症など口腔環境の異常、消化器疾患、糖尿病、肝疾患、妊娠、感冒などの全身疾患に分類されるが、原因不明のものは難治である。漢方医学的には、舌に開竅する心、涎?唾と関連する脾?腎と関連があると考えられる。また、古典には「舌不知味」、「口不知味」、「食不知味」、「口苦」などと表現されている。近年の国内の症例報告や成書には、補気健脾剤の記載もあるが、黄連解毒湯、小柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、竜胆瀉肝湯などの清熱剤によるものが多い。現代医学的に原因不明の味覚障害を主訴とし、陽気虚を伴う2症例に漢方治療を行い、奏功したので報告する。