入門書，私的回想

摘要

私が京大理学部で巽友正先生の「流体力学」の講義を受けたのは1975年頃であるが，身を入れて流体力学を勉強したのは大学院に入ってからのことである．当時，京大の物理学科の学生が読む日本語の標準的なテキストは，今井功先生の「流体力学」（岩波全書，1970）および「流体力学（前編）」（裳華房，1973），角谷典彦先生の「連続体力学」（共立出版，1969#），ランダウ·リフシッツの「流体力学」（邦訳，東京図書，1971#）あたりだった．うろ覚えだが，私が最初に読んだのは今井先生の岩波の「流体力学」だったと思う．巽先生は，最初の講義のときに，今井先生の「流体力学」（岩波全書）と谷一郎先生の「流れ学」（岩波全書，1967#）を挙げて，「理論と実験が食い違ったとき，実験が間違っているというのが前者の本で，理論が間違っているというのが後者の本です」と紹介された．大事な事項が要領よくまとまっていて，とても分かり易かったことを覚えている．