インドにおける鉄道ゲージの多様性:帝国主義と技術史の間で

摘要

鉄道は今や日常的に利用される一般的な移動手段であるが，その歴史は各国地域ごとに多様である.日本での鉄道建設はいわゆるお雇い外国人の協力によってなされたのであるが，インドをはじめとする植民地下にあった地域は，帝国主義の文脈で鉄道建設が主導されたという点で事情が異なる.本発表では，帝国主義状況下にあったインドを中心に取り上げる.現代において，インドの鉄道に反映されている植民地的遺産の一つが鉄道ゲージの多様性である.鉄道ゲージとは，鉄道の線路の幅のこと指す一種の技術規格であり，客車の車軸や車両限界，鉄道の走行に関わる周辺装備の規格にも関係する.一般的に国際的な標準規格ともいわれる標準軌（1,435mm)を中心に，それより広いものを広軌，狭いものを狭軌と呼ぶ.欧米の多くは標準軌を採用しており，植民地下にあった地域は狭軌を現在も採用しているという一般的傾向が看取される.