金属溶射2.0

摘要

鉄は自然界で安定して存在した鉄鉱石の状態に戻ろうとする．つまり自然の節理として酸化して錆びる．塗装などの環境遮断を基本とした防食は，それに逆らって水や空気になんとか触れさせないように防ぐ．しかし，絶対ではない．ひとたび腐食因子が進入すれば，局部腐食となり，それを起点として腐食が進行する．それに引き換え，犠牲防食作用は鉄より錆びやすい金属を溶射して，他の金属が犠牲となって腐食することで，可能な限り抗おうとする．まるで，災害に対するジレンマを抱える我々土木技術者の生き様のようだと感じる．我々は市民やステークホルダーの期待に応え，完全に自然を制御しようとする．そして，皆が安全になったと思う．そうすると，自然はカウンターパンチを入れるように，それ以上の力で甚大な被害を与える．土木は自然を完全に支配はできない．でも，一人でも多くの命を守り，当たり前を当たり前であり続けさせるために抗い続ける，誇り高く尊い仕事だ．そんな金属溶射に関して，レガシーシステムから脱却して未来へのアップデートを行う，パラダイムシフトへの期待を稚拙ながら私の言葉で以下に述べる．