ステロイドの適正使用

摘要

副腎皮質ステロイドホルモン(以下,ステロイド)は,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease : IBD)の治療薬が続々と増えている現在においても，いまだに有効性の高い重要な薬剤である。ステロイドの投与法は新規分子標的薬のように添付文書上で決まっておらず,疾患によっても異なるため,開始用量，投与期間も含め悩むことも多い。さらに,有効性が高い薬剤であるがゆえに，結果的に長期投与となりうるという落とし穴もある。一部の膠原病のようにステロイドの維持投与が有用かつ必要な疾患はあるが，IBDにおいては，ステロイドによる寛解維持効果のエビデンスはなく，むしろ長期投与による副作用が問題となる。本稿では，IBDのステロイド治療の有効性のエビデンスや，その適正使用,また注意点について潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis : UC)を中心に概説する。