2.福井県における新型コロナウィルス感染症を振り返る

摘要

新型コロナウィルス感染症（COVID-19）は100年に1度の感染症パンデミックともいわれ,様々な分野に多大な影響を及ぼした.輸血領域でも血液製剤を介する感染について懸念されたが,未だ輸血による感染が疑われた事例はない.同じコロナウィルス感染症であるSARSやMERS,またはH1N1インフルエンザを含む呼吸器感染の原因となるウィルスが輸血により感染が伝播した例の報告もない.COVID-19は感染拡大の初期にクラスターを形成するのが特徴であることや，80%が軽症または無症候性として経過し，80%の感染者は他人に感染させないことが厚労省?専門家会議から報告された.2020年4月初旬，福井県は人口10万人当たりの患者数（6.7人）が全国1位となり，東京と共に感染爆発の危機にあることが連日報道された.臨床現場でも医療崩壊を危惧したが，県医師会による“医療提供体制緊急事態宣言”の発令を機に県内医療機関が連携を取り状況は好転し，一歩手前のところで崩壊を回避できた.いわゆる第1波としての"夜の街クラスター"に端を発したものであった.さらに，その後8月にも第2波として“カラオケクラスター”を経験した.