覚醒剤使用の引き金に関する実証的研究ー薬物依存と他のアディクションの併存に焦点を当ててー1

摘要

近年,我が国の薬物依存症治療ではリラプス?プリベンションを軸とした治療が展開される ようになり，再使用につながる対象者特有のリスクを同定し それへの対処法を身につけると いう認知行動モデルに沿ったアプローチが重要視されている.具体的な治療モデルとして多く の専門的医療機関等で取り入れられているのがMatrix Modelであり，このモデルを参考に我 が国で開発された覚せい剤依存治療プログラムFSMARPPJや類似の治療プログラムが効果を 上げている吃 また，矯正?更生保護領域においては，覚醒剤取締法違反により受刑した者の 刑務所への再入率の高さ等を背景として，薬物事犯者の再犯防止が重要な課題とされており3), 再犯防止対策の一つとして，薬物事犯者への処遇プログラムの拡充が図られてきた1)2) かねて から薬物事犯者の多くはアディクションの段階にあることが報告されているところ，例えば， 刑事施設における薬物依存離脱指導では,年間1万人前後の薬物事犯者が認知行動療法に基づ くプログラムを受講しており，薬物再使用への欲求の低減，情動?意欲面の問題の改善等，一 定の効果が確認されている5)6).