Breast and Endocrine Tumor 乳腺内分泌腫瘍 周術期早期乳がん補助薬物療法の新たなる展開:I. Luminal乳癌患者の予後を改善のために

摘要

1.乳癌の予後予測:個々の乳癌患者における術後治療の必要性を検討する 上で,まず必要になるのが予後予測であり,がん腫横断 的に用いられるツールとしてTNM病期分類が知られて いる。TNM病期分類は治療成績の時間的?空間的比較 などに用いられ，臨床試験の適格基準にも使用されるな ど世界中で利用されるものである。治療が進歩し治療成 績が向上するに伴い，5?7年程度で改訂が行われてき た。しかしながら,乳癌診療においては分子標的治療な どの進歩により，解剖学的な病期分類のみで予後を予測 することがもはや困難であり，生物学的特性によるサブ タイプ分類と組み合わせることが必須となってきた。 2017年1月から使用されているTNM病期分類の第8版 では,従来の解剖学的TNM病期分類に加えて，サブタ イプを加味した予後予測TNM病期分類(表1)が追加 された.内分泌感受性が高い(Oncotype Dx<=llなど) LuminalAの腫瘍では，解剖学的病期U A (T2N0M0) であっても予後予測病期はI Aとなる。一方で,解剖学 的病期I A (T1N0M0)の高悪性度トリプルネガティブ 乳癌では，予後予測病期はHAとなり逆転している。同 様に解剖学的病期IIB (T2N1M0)のLuminalA乳癌の 予後予測病期はIBとなるのに対し，同じ解剖学的病期UB (T2N1M0)のトリプルネガティブ乳癌では，予後 予測病期はmeと大きく異なってくる。がん腫の一部 (精巣腫瘍など)では,TNM病期分類よりも予後予測に 優れたリスク分類が用いられている。乳癌領域でも治療 の進歩によって，解剖学的病期よりも予後予測によるリ スク分類が一般的になる時代がくる可能性がある.