イネ栽培化における種子脱粒性喪失過程の実験的検証

摘要

種子を可食部とする多くの作物において脱粒 性の喪失は栽培化過程における重要な形質変 化の1つである。栽イネ(Oryza sativa)は野 生イネ(ひrufipogon)から栽培化されたことが 知られており、これまでに脱粒性の喪失には sh4とqSH1に加えてqSH3遺伝子座におけ る変異が関わった可能性が示唆されていた。 qSHl遺伝子座における変異はジャポニカイ ネに特異的であることから、栽培化の比較的 後期において選抜されたと考えられる。一 方、sh4とqSH3遺伝子座は原因変異がイン デイ力とジャポニカに共通して保存されてい ることからイネの栽培化初期に選抜された可 能性が考えられた。そこで、本研究ではまず sh4とqSH3遺伝子座における変異の効果に ついて種子基部の離層の形成について評価を 行った。また、野生イネの穂は開帳性を有し、 種子先端には長いのげが存在しているため種 子脱粒が促進される。穂の開帳性を支配する SPR3遺伝子座もイネの栽培化に関与したこ とが報告されていることから、離層形成の阻 害に_わるsh4とqSH3遺伝子座における変 異の相互作用、また穂の開閉に関わるSPR3 遺伝子座との相互作用を調べることで、イネ 栽培化初期過程における脱粒性の抑制がどの ように確立されたかを実験的に検証すること を目的とした。