炎症性腸疾患(IBD)の病態からみる治療原則と最適な治療を目指して

摘要

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ； IBD)の原因は完全に解明はされていないが,遺伝学的素因,食事や衛生環境などの環境因子,腸内細菌とそれに対する宿主の免疫学的応答が関与していると考えられている(図1)。報告されている多くの疾患感受性遺伝子が示しているように自然免疫応答や獲得免疫応答の異常やその制御異常がIBDの病態に関与している。特に腸内細菌と宿主の相互関係は腸管免疫学と腸内細菌学の進歩にょり飛躍的に解明が進んでいる。治療にあたりまず注意すべきは,IBDと総称されるクローン病と潰瘍性大腸炎は類似の疾患でありながら，両疾患の病態は明らかに異なり,従って治療法も異なっていることである。