外傷患者に対するhemostatic resuscitation と輸血戦略

摘要

外傷死の30?40%は出血死であり,そのうちの約10%が外傷初期出血に対する対応の不備が理由の 『防ぎ得た外傷死(preventable trauma death : PTD)』である.外傷自体によって生じる「外傷誘発性 凝固障害」は受傷後数分以内に生じ,病院到着時点では既に25?35%に発症している.したがって， 外傷初期の凝固?線溶異常の適切かつ迅速な補正が，PTDを回避するために極めて重要となる.外傷急性 期は線溶亢進型の凝固異常であるため,患者搬入後は速やかにトラネキサム酸を投与する.大量輸血〔24 時間に赤血球濃厚液(red cell concentrate : RBC)を10単位以上投与〕が必要と予測される患者に対 するhemostatic resuscitation は；,晶質液投与を最小限(<=1,500 mL)に抑え，大量輸血プロトコール (massive transfusion protocol : MTP)を発動して,当初から新鮮凍結血漿:血小板濃厚液:赤血球濃 厚液=1:1:1?2で輸血することが，出血制御やPTD回避のための輸血戦略として推奨される.