急増する梅毒に対していま何をすべきか：梅毒の攻略

摘要

梅毒は,わが国のみならずグローバルに公衆衛生上の問題となっている.·診断方法として,梅毒血清反応という強力なツールが存在するほか,PCRの診断への活用が始まっている.·ペニシリン耐性のTreponema pallidum subspecies pallidumは報告されておらず,日常診療では早期に診断されれば確実な治癒が期待できる.·治療のうえで,早期梅毒において単回治療が可能なbenzylpenicillin benzathine筋注製剤が2022年1月にわが国で約40年ぶりに発売された.梅毒は,Treponema pallidum subspecies pallidum（Tp）による慢性の全身感染症であり,主に性行為により感染が成立する.垂直感染し,胎児喪失や障害につながることがある（先天梅毒）.多彩な臨床症状を呈する複数の臨床病期を有し，無症状の時期（潜伏梅毒）を挟みながら進行する.梅毒はヒト免疫不全ウィルス（human immunodeficiency virus : HIV）感染のリスクを上昇させる.ペニシリン耐性のTpはこれまでに報告されておらず，治療法は確立しているため，日常診療では早期に診断さえできれば確実な治癒が期待できる.ただし,神経梅毒や,現在ではきわめてまれになったとはいえ第3期梅毒はいまだに存在し，さらに先天梅毒の報告数は増加しており,診断および治療上の課題は存在する.HIV感染症および先天梅毒という公衆衛生上の大きな課題の改善は，早期発見と確実な治療にかかっている.