診断のアプローチ：遺伝子検査

摘要

近年の研究の結果，犬の膀胱，前立腺，尿道の腫瘍における さまざまな分子異常があきらかになってきた。これらの分子 異常の一部は診断手法として臨床応用され，現在は国内外で これらの腫瘍の診断に利用可能である。ここではもっとも一 般的に用いられるBRAF遺伝子検査を中心に解説する。MAPK/ERK (RAS/RAF/MEK/ERK)伝達経路は細胞の 分化や増殖，生存に重要なシグナル伝達経路であり，この MAPK経路の分子異常に伴う恒常的な活性化はさまざまな 腫瘍で認められる。五ffAF遺伝子はこのMAPK伝達経路の 一分子であり（因1)，BiPAF遺伝子の600番目のコドンであ るバリンがグルタミン酸に置換されるV600Eミスセンス変 異は人の悪性黒色腫や甲状腺癌をはじめとした数多くの腫瘍 で高率に認められるこれらの腫瘍における遺伝子変異に伴うMAPK伝達経路の恒常的な活性化は腫瘍化の一 因となるだけではなく，変異BRAFタンパクおよびその下流 経路を阻害する分子標的療法の治療標的にもなっている。