公衆衛生活動と食品衛生特に微生物による食中毒について

摘要

食品衛生における公衆衛生活動とは地域社会の人々の食による健康被害を予防し、食の安全 性を確保するための保健機関、農水機関、組織等による衛生活動である。本講演では微生物による食中毒に関して国の機関、東京都において取り組んできた内容や演 者が関与した活動について講話する。1.食中毒の病因物質の解明微生物による食中毒防止活動は食中毒の原因究明がなされなければ予防対策などが推進でき ない。1952年頃の食中毒は化学性食中毒と自然毒食中毒が中心で、細菌性食中毒はサルモネラ 属菌と黄色ブドウ球菌のみが報告され、不明食中毒が年間約1100件であった。その後1950年 には藤野恒三郎教授により発見された腸炎ビブリオが国内の重要な食中毒菌であることが判明 し、年間約500件の発生が見られた。それでも1960年代では不明食中毒が500件ほど認めら れ、当時の都立衛生研究所細菌部長であった善養寺 浩先生からは、病因物質不明食中毒を解 明することが衛生研究所の使命であると指導された。原因不明食中毒の解析を進めた結果、1963年にはウェルシュ菌、1975年には嘔吐型セレウ ス菌、1979年にはカンピロバクターの各食中毒の国内での発生を明らかにすることが出来た。 また1984年には甲斐らにより腸管出血性大腸菌、1983年には同研究所ウィルス科の関根らは ノロウィルス食中毒を明らかにした。その結果1990年代では不明食中毒が100件以下となっ た。新たに発見した病原菌の細菌学的な解析や動物、食品などにおける分布なども明らかにさ れ、食中毒予防対策が積極的に推進されてきた。