小特集にあたって

摘要

無機顔料の歴史を遡ると，旧石器時代まで至り，すでにベンガラが人体彩色として使用されていた証拠がみつ かっているとのこと，まさに人類の歴史を彩ってきた材料だと言えよう。 ベンガラだけでなく，無機顔料は，耐候性，耐熱性などに優れ，化粧品，塗料，インクに広く利用されてきた。 協会誌でも特集や講座にて，たびたび取り上げてきたトピックスの一つである。有機系に比べ，鮮やかさや機能 性に劣るというイメージのある無機顔料である力?，長年にわたる研究により高彩度化や機能化が進んでいる。色 材としてのみならず，体質顔料，光輝性顔料，蛍光顔料あるいは添加剤としてなど，機能的にも用途的にもさま ざまなバリエーション力5存在し，幅広い研究がなされている。近年，高まりつつある有機系色素に対する忌避感 を考えると，ますます無機系色材へ関心が高まることが予想される。本小特集では，無機顔料に関する4本の総 説·解説を掲載する。