第十話食料生産と環境維持の 両立を目指して

摘要

私の専門は調理科学である。あの肉は軟ら かくうま味がある、これはかたくうま味がな いなど評することばかりで、生産過程につい てはほとんど知識がない。ここに「果てしな い話」の依頼に困惑しつつ書いている。的外 れはご容赦願いたい。最近の畜産業について気になることがあ る。畜産業は地球温暖化の要因として取り上 げられている。そして肉の代替え食品として 大豆や小麦のタンパク質食品が脚光を浴びて きている。肉の代替食で解決するのだろうカゝ。わが国の畜産業の歴史は浅く、昔は家庭の 庭先で鶏を飼い、年に何回か潰して食す、と いうような食生活であつた。日本の郷土料理 や行事食に登場する肉はほとんど鶏肉である。（一社）日本調理科学会では2013年から 地域の1960-1970年代に食されていた家庭料 理を調査し、その結果を2017年から4年にわ たり16冊の本にまとめた"。その中で肉類の 料理は1冊で魚介類の料理は2冊である。牛 肉の好みは西の牛肉、東の豚肉と言われてい たが、2000年の調査によれば、牛肉の嗜好の 地域差はなくなっているとの報告もある2)。 牛肉の霜降り肉の嗜好を年代別にみると50歳 代以上の方は好きという方が多く、霜降り肉 のもつ高級感と軟らかさを好んでいると考え られ、20歳代以下では霜降り肉を好むものは 少なく 、霜降り肉の脂肪の摂取量を問題にし、 赤身肉の方を嗜好しているようである3)。