Melanoma and Non-Melanoma Skin Cancers メラノーマ?皮膚癌:I. Dermatologic Oncology—その概念および本邦での現況と展望一

摘要

日本人の死因として1981年にがんがその第1位の座を占めるようになり,その数は高齢者人口の増加もあって年ごとに増加し,今や全死亡者数に占める割合は27.3%にも達している。日本人の2人に1人はその生涯で一度はがんに罹患し,3.7人に1人が死亡するほどである。悪性黒色腫や有棘細胞癌に代表される皮膚がんは日本ではがん全体に占める割合が2%程度と低く,5年生存率も90%を超えるなど予後良好なこともあって,一般的には皮膚がんに対する診療はあまり重要視されず,それに関する知識は普及しているとはいい難い。一方,欧米では悪性黒色腫（メラノーマ）や有棘細胞癌に代表される皮膚がんはがん発生数の上位を占めるほど頻度が高く,紫外線曝露機会の増加による急激な患者増もあって様々な面での医療への負担増が問題となってきた。このため,がん診療における皮膚がん診療分野として皮膚腫瘍学dermatologic oncologyの重要性が高く認識されており,がん医療の重要分野として確立されている。しかしわが国においても高齢者人口の増加や生活様式の変化に伴う紫外線曝露機会増加の影響などから,皮膚がんの発生数は過去20年で倍以上に増加してきており,今後さらなる増加が予想されている。したがって,dermatologic oncologyは日本のがん診療においても重要性が増してきており,それに関する知識の普及と体制整備が急務である。そこで本稿では,わが国におけるdermatologic oncologyの現状を解説するとともにその課題について検討し,今後の展望について筆者の私見を交えてではあるが考察する。