体温測定を利用した牛繁殖管理技術

摘要

畜産繁殖経営、酷農経営を安定化させるために 日々の繁殖管理は非常に重要であるが、近年繁殖 管理にかかる様々な問題が生じており、それらを 解決する効率的、正確な繁殖管理法の開発が望まれている。問題の一つとして、世界的に牛、啤.に乳牛の妊 娠率低下が指摘されている。日本国内の牛交配は ほとんどが人工授精や受精卵移植による人工的な 方法で実施されており、適切なタイミングで交配 するための発情検知が必須となっている。という のも、牛の交配は排卵の,タイミングに合わせて実 施する必要があり、一般的に卵子は発情開始30 時間前後で卵巣から排卵されるためである。発情 検知を含めた繁殖管理はこれまで畜産,酿農家の 日々の観察により行われることが一般的であり、 飼養管理の中でも重要な作業の一つであった。し かしながら、畜産従事者の高齢化や経営規模の拡 大に伴い、日々の観察等の繁殖管理に割ける時間 が少なくなっている。観察時間の短縮により発情 発見率（検出率）が低下するほか、近年は乳量や 肉質を重視した品種改良や高温ストレスなどの環 境の影響により乗駕許容行動に代表される発情徽 候の微弱化も発情検知率が低下する要因となって いる1、発情が適切に検知できない場合、適期に 交配できないことによる受胎率の低下に加え、交 配未実施による妊娠率の低下も生じる。繁殖にお ける生産効率は妊娠率に依存しており、人工授精 受胎率が一定であれば妊娠率は発情発見率が高い ほど高くなる。つまり、生産効率は発情発見率に 依存し2高い発情検出率を実現することは生産 性を維持し、経営を安定させるうえで重要である。