R-754表面モット絶縁体へのキャリアドーピングによる超伝導の実現

摘要

モット絶縁体とは，バンド理論では電気をよく流す金属であると予想されるにも関わらず，バンド計算では自動的には考慮されない強い電子相関効果によって，電気を流さない絶縁体になっている物質である。興味深いのは，伝導を担うキャリアの数をドーピングという，半導体分野でよく利用されている手法で制御することで，モット絶縁体が，電気抵抗がゼロになる超伝導になる場合があることである。バルクの銅酸化物高温超伝導体はこのような物質群であり，伝導を担うCuO_2面にキャリアがドープされることで超伝導が発現する。これまでに報告されている最高の超伝導転移温度は，HgBa_2Ca_2Cu_3O_yにおける153Kであるが，高い転移温度が実現するミクロスコピックな物理的メカニズムは発見から約40年が経過しようとしているにも関わらず明らかになっておらず，現在でも理論·実験両面で盛んに研究されている。