大気環境問題に対するリモートセンシングの役割

摘要

近年，異常気象が増加傾向にあり，その要因として，中緯度偏西風の蛇行，温暖化に伴う海面水温の上昇による積乱雲や台風への水蒸気供給量の増大など，全球的な気候変動による影響の大きさが指摘されている．これらは長期的な地球の自然気候変動が要因の一つとされているものの，産業革命以降の人間活動による影響が大きい．地球の気候の状態を調べ，理解し，評価することが長期的な気候変動の予測および人間活動の影響を抑制する政策を実施する上で，きわめて重要である．また，黄砂や火山灰など，局所的に自然発生する大気汚染物質は風により遠方へと輸送されるので，全球規模で計測する必要がある．人工衛星観測は全球を周期的継続的に計測することを可能とした唯一手段であり，全球の気候を観測的に評価するベースデータ取得の観点からきわめて重要な観測手法といえる．現状，地上装置で直接計測できる領域は限られており，船舶による洋上計測や航空機による空間計測は限定的であるなど課題がある．一方，距離分解能をもつリモートセンシング手法は特定の場所での空間分布を継続的に計測することが可能であり，長中期的な変化だけでなく，日変動など短い周期での大気の振る舞いを知ることができる利点がある．本特集号は，特に大気環境汚染，地球温暖化，豪雨災害に直結する大気中のエアロゾル，二酸化炭素（CO_2），水蒸気の各計測を行うリモートセンシング技術に着目し，それぞれの観測手法について解説する．