高齢ドライバーに対する外来での認知機能評価

摘要

電解質?甲状腺ホルモンなど,代謝性認知機能低下を診断できる血液検査は必須で ある.脳出血や正常圧水頭症などの認知機能低下につながる頭蓋内疾患(treatable dementia in the brain)の有無をMRIで調べる.また白質病変の広がりがあれば,生活習慣病治療，特に軽度の高血圧に対して降圧薬の服用による厳格な血圧管理が必 要である.ミニメンタルステート検査(MMSE)などの認知機能検査に加えて,ドライビング シミュレータ(DS)やドライブレコーダ(DR)を用いて多角的に安全運転能力を評 価することが望ましい.認知症の診断や免許返納が難しい場合には,認知リハビリテーションの介入を考慮 すべきである.近年,高齢ドライバーによる悲惨な交通事 故が多発し,その対策が国家的喫緊課題の1 っになっている.本邦では道路交通法の改正 により,2009年から75歳以上の高齢者の運 転免許更新時には認知機能検査が義務化さ れ,認知症では自動車運転が法的に禁じられ ている一方,軽度認知障害(mild cognitive impairment : MCI)では運転可能である.安 全運転を行うには,注意力?空間認知力など 多様な高次脳機能が必要であるが,通常の改 訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R) やミニメンタルステート検査(MMSE)では安 全運転評価が難しいケースも多い.