【下垂体疾患】:非機能性下垂体腺腫,Rathke囊胞,頭蓋咽頭腫:視力?視野障害と下垂体機能低下症を見逃さない!

摘要

下垂体とその近傍から発生する病変は多彩だが,ホルモン過剰所見?症状を呈する機能性（ホルモン産生）下垂体腺腫を除いた腫瘍性病変において,最も頻度の高いのが非機能性下垂体腺腫（図1）, Rathke囊胞（図2）,頭蓋咽頭腫（図3）である.非機能性腺腫と頭蓋咽頭腫は良性腫瘍（WHO grade 1）,Rathke囊胞は非腫瘍性の囊胞性病変である.これらは病変による周囲組織の圧迫（mass effect）あるいは炎症?破壊に伴う症状，すなわち頭痛,視力?視野障害や複視などの神経症候，下垂体機能低下症や尿崩症などの内分泌機能障害,下垂体茎圧迫（stalk effect）による高プロラクチン血症などで発症する.特に視力?視野障害（両耳側半盲:図1a）や下垂体機能低下症を認めた場合にはこれら腫瘍性病変を強く疑う.下垂体機能低下症の症状は全身倦怠感,食欲不振,抑うつ,無月経,性欲低下，寒がり，肥満,筋力低下など障害されたホルモンや期間などにより多彩である.小児では低身長を契機に診断されることも多い（図3a）.一方,頭痛?めまいの精査や脳ドックなどを契機に発見される下垂体偶発腫もこれらの病変が大多数を占める.特にRathke囊胞はMRIの普及もあり，近年，無症候性で見つかる頻度が増えているが，その大多数は生涯にわたり無症候に経過し,治療を要さない.