がん薬物療法に伴う下痢症

摘要

がん薬物療法に伴う下痢症は,経験することが多い有害事象の一つである。適切な下痢の診断?治療が行われない場合,脱水や電解質異常，感染症の合併により重篤 化する可能性があるため,その対応に習熟する必要がある。治療薬剤以外にも下痢を来す原因が存在するため,病歴聴取を行ったうえで鑑別をあげる。近年使用する機会が増えた免疫チェックポイント阻害薬は,腸炎による下痢症を誘発する が,既存のがん薬物療法による下痢症とは対応が異なる。下痢は「1日以内に3回以上の軟便もしくは水様便を 認めること」と定義されている。今日のがん薬物療法に おいて下痢は経験することの多い有害事象の一つであ る。下痢の重症度は有害事象共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events ； CTCAE)(表1)により評価し,重症度に応じた治療を行う。治 療のタイミングを逸すると，脱水や電解質異常,感染症 などの合併症を来し,患者の全身状態の悪化やがん薬物 療法の長期間の中断を余儀なくされるため，初期対応が 重要である。近年，適応疾患の拡大により免疫チェック ポイント阻害薬の使用頻度が増えているが，その特徴像 や免疫関連腸炎の対応に関する知見が蓄積されつつあ る。