高P血症ー大腸内視鏡検査後に発症した急性リン酸腎症

摘要

大腸内視鏡検査の前処置として使用された リン酸水素ナトリウム製剤により,高P血症と急性腎障害をきたした症例である.本症例のような病態は急性リン酸腎症(acute phosphate nephropathy)と呼ばれ,急激なリン負荷の結果,尿細管の管腔内のリン濃度が上昇し，尿細管の閉塞と上皮障害が引き起こされる.高齢,CKD,高血圧を有する患者 でリスクが高く,レニン-アンジオテンシン系阻害薬や利尿薬の内服によりさらにリスクが上昇する.本例ではリスク因子を多数有し ており,リン酸水素ナトリウム製剤以外の腸 管洗浄薬を使用すべきであった.やむなくリン酸水素ナトリウ厶製剤を使用する場合は，せめて生理食塩水を予防的に投与し,血清リン濃度，腎機能をモニタリングするべきで あったと考えられる.炭酸カルシウムにはリ ン吸着効果があるが,リン酸水素ナトリウム製剤の腸管洗浄効果を減弱させることから, 大腸内視鏡検査の前に行う対策としては不適 切である.