ヒ卜皮膚線維芽細胞でのヒアルロン酸分泌の年齢依存性及びUVA誘発性減少のメカニズムと，老化皮膚及び光老化皮膚におけるヒアルロン欠乏症を改善する有望なケミカル第4章ヒアルロン酸欠乏症の改善一ヒ卜皮膚線維芽細胞におけるヒアルロン酸のUVA照射分泌阻害に対するアスタキサンチンの防御効果

摘要

我々の以前の研究では，カロ齢皮膚や光老化した皮膚の真皮でのヒアルロン酸（HA)欠乏は，ヒアルロン酸合成酵素（HAS)2の年齢依存性及びUVA誘導された発現減少に由来することを示した1)2)(第2章で記述)。真皮のHA欠乏症は，カロ齢皮膚や光老化した皮膚でのシワやタルミの発生を促進する上で重要な役割を果たすので，UYAによるHA分泌抑制を改善する，またはHASの発現を刺激することによって分泌を増加させる可能性を有する薬剤を探すことが重要と考えられる。すでに我々は，UVA照射が正常ヒト皮膚線維芽細胞（NHDF)におけるHA分泌を著しく減少させ，この減少が光老化した皮膚の真皮におけるHA欠乏症の部分的な原因となっている可能性を報告した(第2章で記述)。UVA慕露NHDFにおけるHA分泌のダウンレギュレーションは，主にHAS2の減衰発現を介して媒介することがわかっている。UVAによるHA欠乏症を改善する可能性のある薬剤を探す中で，アスタキサンチン（AX)が培養NHDFでUVA照射によるHA分泌抑制を防止する能カを有することを見いだした。AXは，植物や海 洋の魚介類に見られるキサントフィルカロチノイドであり，連鎖破壊抗酸化物質，フリーラジカルのスカベンジャー及び単一酸素，単一及び2つの電子酸化物質を含む活性酸素種(ROS)及び窒素種の強力なクエンチャーとして役立つことはよく知られている。そのポリエン骨格に共役した末端カルボニル基の存在（図1)により，AXはβカロテンのようなカロチイドよりも強力な抗酸化性を有する。その抗酸イ匕作用に加えて，AXはまた，主に活性酸素種を消去する能力に起因する抗炎症及び免疫調節活性も有する。紫外線はROSの最も強力な発生原であり，その主要な細胞標的が皮膚細胞であるため，ヒトケラチノサイト，ヒトメラノサイト，ヒト線維芽細胞に対する抗酸化物質としてのAXの生物学的効果の解析は，皮膚がんを含むUV誘発性皮膚損傷を予防する観点からも非常に重要である。しかし，皮膚の真皮に高レベルのHAを産生し，分泌する細胞であるNHDFにおけるHAのUVAによる減衰分泌を防御するAXの能力を解析した研究は今までになかった。