WHO/EU環境騒音ガイドラインにおける社会音響調査データ

摘要

WHOの欧州事務局が2018年10月に環境騷音ガイドライン（以降，WHOガイドラインと呼ぶ）を発刊して以降，同ガイドラインにおいて示された音源別のRecommendation（勧告値）や，その背景となったSystematic reviewによるメタアナリシスの結果などが，国内外で高い関心事となっている。WHOガイドラインでは「重大な健康影響」として，心臓血管系疾患（虚血性疾患，高血圧），高度の不快感（Highly Annoyed: HA），高度の睡眠妨害（Highly Sleep Disturbed: HSD），認知障害，聴力損失が挙げられているが，これらのアウトカムに関する曝露反応関数の構築に社会音響調査が適用されたのは，主としてHAおよびHSDである。そこで本稿では，本特集の「騒音に関する社会音響調査の最近の動向」というテーマに関連して，WHOガイドラインにおけるHAおよびHSDに関する話題を中心とした解説を行う。なお，WHOガイドラインの作成方法についての詳細は既報で示されているため，本稿では2章で概略を示すにとどめる。