［招待講演］脳損傷からみた発話機能のメカニズム

摘要

脳損傷によって生じる発話症状の「現れ方」を詳細に分析することは，損傷を受けた脳部位が，本来どのような発話機能を担っていたのかを知るための重要な示唆を与える．脳損傷によって生じる発話障害のひとつに「発語失行」という症状がある．発語失行は，「構音運動のプログラミングをとくに担う神経回路の損傷で起こる構音異常」と定義され，近年では，発話のニューラルネットワークモデルであるDIVA/GODIVAモデルに基づいて，その病態を解釈しようとする試みが散見される．ただし，実際の臨床場面においては，DIVA/GODIVAモデルでの解釈が難しい発話症状にもしばしば遭遇する．本講演では，臨床的な見地からDIVA/GODIVAモデルの再吟味を行い，ヒトの発話機能のメカニズムについて考察する．