同一農場で発生した細菌性心内膜炎の牛2例

摘要

細菌性心内膜炎は心内膜に細菌が付着して弁 膜，腱索，肉柱等に炎症性変化が起こる疾患で， 特に弁膜に増殖性腫瘤（疣贅）が形成される.三 尖弁の障害が主であるが，肺動脈弁，僧帽弁，大 動脈弁に障害が起きることもある1.と畜場へ 搬入された牛における細菌性心内膜炎の有病率は0.016であったことが報告されており2, 比較的まれな疾患である.また，臨床現場では細 菌性心内膜炎の生前診断に難渋することも多い 3.今回，同一農場で飼養されていた牛におい て細菌性心内膜炎を発症した2症例を経験した.症例症例1:黒毛和種牛，雌，15力月齢，体重263 kg.主訴は発熱，食欲不振および削痩であった. 10力月齢時に家畜市場から農場へ導入されたが， 導入4力月後に発熱，活気低下および食欲不振を 示した.開業獣医師により抗菌薬を主剤とした治 療を約4週間受けていたが，改善しなかった.来 院時（第1病日），体温39.4°C，心拍数132回/分， 呼吸数44回/分で，心雑音が聴取され，心雑音 の最大聴取域は左胸壁肘頭付近であった.胸部聴 診で肺雑音が聴取された.眼球陥凹，眼粘膜蒼白， 沈鬱，流涎，小さく硬い便がみられ，歩行を嫌が る様子がみられた.第6病日には心臓胸壁でスリ ルが触知された.抗菌薬および輸液を中心に治療 Uこせ,第8病日に死亡した.