慢性咳嗽

摘要

咳嗽のうち,3週間以内の持続する咳を急性咳嗽,3?8週間持続する咳を遷延性咳嗽,8週間以上持続する咳を慢性咳嗽と呼ぶ.慢性咳嗽患者が受診するタイミングとしては遷延性咳嗽期が最も多いが,3カ月を超えてくるとなかば鎮咳を諦めてしまうケースもあり,なかには年単位の咳嗽を訴える患者もいる.胸部画像検査は慢性咳嗽における重要なツールであり，中高年の女性の慢性咳嗽では，気管支拡張症や非結核性抗酸菌症の存在を疑う必要があるが,本症例では胸部画像検査における異常は指摘されていない.胸部画像検査で異常がはっきりしない慢性咳嗽症例に対する問診は多岐にわたるため,上記の質問が決して最適解というわけではないが，日本において遷延性咳嗽?慢性咳嗽の頻度が高い疾患群を理解すると,必要な問診がおのずと頭に思い浮かぶはずである.国内の遷延性咳嗽?慢性咳嗽の報告を表1にまとめた.「不明」や「その他」が多いことが咳嗽診療の難しさを語っている.遷延性咳嗽の患者だけに絞ると，かなりの数が感染後咳嗽と診断される.感染後咳嗽はほとんどが急性咳嗽を呈するが，なかには遷延性咳嗽に至る例も多く，受診する病院が高次医療機関ではない場合には，感染後咳嗽もある程度の期間,鑑別疾患に想定する必要がある.