クローン病を合併した同種骨髄移植後難治性 Clostridioides difficile感染症に対する糞便細菌叢移植

摘要

造血細胞移植後の難治性Clostridioieds difficile (CD)感染症(CD infection, CDI)に対し,糞便細菌叢移植 (fecal microbiota transplantation, FMT)が有効と考えられた症例を経験した。15歳女児,再生不良性貧血に 対しHLA 1抗原不一致の非血縁ドナーより骨髄移植を施行した。移植後4ヶ月頃から消化管移植片対宿主病を 発症,免疫抑制療法に反応したが,移植後5ヶ月にCDIを発症し,以後再燃を繰り返した。免疫抑制剤終了後 の移植後15ヶ月にもCDIが再燃したためFMTを施行した。FMT時の内視鏡で回盲部を中心にアフタ，病理学 的に慢性炎症細胞浸潤と非乾酪性類上皮肉芽腫を認め,クローン病の診断基準を満たした。CDIに対するFMT に続き，クローン病に対して腸溶性budesonideと静注methotrexateにより治療したところ，両者とも寛解を 得た。FMT後28ヶ月現在も，CDIの再発はなく，クローン病は経口 mesalazineの投与のみで寛解を維持して いる。