5G基地局用広帯域10W級GaN増幅器モジュール

摘要

近年，高速·大容量通信の需要に対応するため，第5世代移動通信システム（5G）の普及が拡大している。一つの増幅器モジュールで様々な周波数に対応できれば，5G基地局の無線装置ユニットの低コスト化や共用化に貢献できる。これまで増幅器モジュールの最終段に用いているドハテイ増幅器が狭帯域であるため，このような広帯域化は困難であった。また，以前から小型·髙効率·広帯域を実現する手法として提案されているT型回路をドハテイ増幅器の主増幅器側に用いて，補助増幅器側には回路を配置せずに，トランジスタの寄生容量を利用してドハテイ増幅器に特徴的なインピーダンス変調回路を構成する設計手法は，このモジュール構成の場合は補助増幅器側に回路を配置しなければならないため採用が困難であった。そこで，主増幅器と補助増幅器側回路を統合的に設計することによって，従来の設計手法の利点を生かしつつ，より広帯域な動作を実現する新たな設計手法を用いて，10W級GaN（窒化ガリウム）増幅器モジュールを試作した。試作機を評価した結果，3.4～4.1GHzの700MHz帯域で，20MHz変調帯域の信号下で歪（ひず）み補償後の隣接チャネル漏洩（ろうえい）電力比（ACLR: Adjacent Channel Leakage Ratio）が-46dBcを満たした上で，42.0～44.6%の電力付加効率（PAE）と28.6～31.0dBの利得（Gain）を達成できたことを確認した。今回開発した設計手法を用いることで1台で3～4GHz帯に割り当てられている5G周波数のほぼ全ての帯域をカバーできる。