特集にあたって

摘要

希土類元素を含む金属間化合物では結晶中で希土類の局在した4f電子が，伝導電子と混成をおこします。局在4f電子を一つ有するCe化合物においては，この混成を起源として磁性をもたらすRKKY相互作用と抑制する近藤効果の拮抗により描かれ，ドニアックの相図として広く知られています。この拮抗は圧力によって制御することができ，4f電子の世界を理解する上で，圧力が重要なパラメータになっています。この4f電子を複数個有するSm，Eu，Ybを含む化合物では複数の4f電子と価数不安定性が絡み合い，複雑な物性をもたらします。その複雑さゆえに近藤絶縁体，非磁性-磁性転移，価数秩序，価数量子臨界現象など多彩な物理現象が現れ，その機構の解明に興味がもたれています。本特集では，圧力によりもたらされる，特異な非磁性-磁性転移を示すSmSの~(33)S-NMR，Au-Al-Yb系準結晶·近似結晶とSmSの特異な電子状態，YbPdの価数秩序の崩壊と量子価数揺らぎの誘起，EuCu_2Ge_2における価数量子臨界現象，また高圧力下比熱測定で視たYbNi_3Ga_9，YbAgGeの特異な磁気秩序，高圧力下赤外反射分光によるCeRhIn_5，YbNi_3Ga_9，YbCu_2Ge_2の光学伝導度σ(ω)について取り扱い，4f電子系の特にSm，Eu，Yb系化合物における複雑な系を明らかにすべく異なる手法から研究に取り組む先生方に記事の執筆をお願いしました。高圧力下における4f電子系の多彩な物理現象とその系を明らかにするための様々な手法を学会員の皆様が知ることで，本物質系の研究幅が広がることに繋がるとともに，学会員の皆様につきましては，本特集が，今後の研究を展望する際，その着想を得る一助になれば，と期待しております。最後に，ご多忙中にもかかわらずご執筆いただきました執筆者の皆様，ならびに原稿の査読にご対応いただきました皆様に厚くお礼申し上げます。