基礎型高度熟練技能における暗黙知の構造解析とその適用に関する理論構築

摘要

現代の産業界における大型機器ものづくりにおいて，最先端の科学技術はもちろんのこと，高度熟練技能の使用はいまだに必要不可欠であり，この現象は今後とも続くと予想されている．そのため著者らは，研究報告を行なったが，それらが扱っている範囲は表層構造の部分にすぎず，それらはいまだ萌芽的な段階にとどまっていた．最近の文献によると，従来の文献に記述されている諸要請のうち，通常の技能に関する事項は次第に実現されつつあるが．ものづくりの現場において高度熟練作業者によって支えられている工程は多く，それらの本質的実現はいまだ十分とはいいがたい現状にある．その中にあって本稿は，高度熟練技能の暗黙知に関して基本構造の解明とその適用に焦点を当てて探求し，その理論構成を試みるものである（=本稿の目的）．ただし，「高度熟練技能」や「その理論構成」といってもそれらが意味する範囲や構造はきわめて多様であり，それらのすべてを本稿で取り扱うことは不可能なので，まずは本稿で扱うものを以下の「準備-1」～「準備-7」において特定する．