低血糖予防と糖尿病治療薬の減薬?中止基準

摘要

高齢者糖尿病に対して目標下限値を設定し,より安全な治療を行う血糖コントロール目標が設定された.特にスルホニル尿素（SU）薬による厳格な血糖管理が，重篤な低血糖を引き起こす危険性が高い.高齢者糖尿病において，重症低血糖と認知症は双方向に関連し,悪循環を形成する.85歳女性.主訴物忘れがひどくなり,同じことを繰り返し話す.現病歴 BMI 26.0 kg/m~2. 20年前より糖尿病を指摘され,近医に通院し内服治療を行っていた.内服薬はグリメピリド（アマリール~R） 1 mg,リナグリプチン（トラゼンタ~R） 5 mg, メ トホルミン（メトグルコ?） 500 mgだった.近医での定期受診の際に同席した娘から，「最近 物忘れがひどくなり，同じことを繰り返し話す」と訴えがあった.同日採血で随時血糖182 mg/dL, HbA1c 5.7%,貧血は認めてし、なかった.腎機能障害（Cr 1.35 mg/dL, eGFR 28.8 mL/分/1.73 m~2）あり.後日,当科紹介となった.実は食欲低下していた際に，ソファーにぐったり倒れているところを目撃されたことがあ り，主訴は低血糖に伴う認知機能障害と考えた.内服はリナグリプチン5 mgのみとして, 症状は軽快傾向であった.その後,HbA1cは7%前後で推移している.